大判例

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仙台高等裁判所秋田支部 昭和29年(う)8号 判決

原判決の引用している検察官に対する被告人の第三回および第四回供述調書をみると「公文書偽造等被疑事件につき……本職はあらかじめ供述を拒むことが出来る旨を告げて取調べた……」と記載されている。そこで弁護人は本件背任の被疑事件については検察官から供述拒否権を告げられなかつたのであるから右調書は証拠力がないと主張するのであるが、刑事訴訟法第一九八条第二項(昭和二八年法律第一七二号による改正前の規定)の供述拒否権の告知は被疑者に対し単に自己に不利益な供述を拒否することができる旨を告げれば足りるのであつて、被疑事実を告知する必要はないものと解すべきである。したがつて検察官が公文書偽造事件について被疑者の出頭を求め、供述拒否権を告知したうえ、被疑者の任意の供述を聞いたところ、その供述中にたまたま背任と疑われる趣旨の供述があり、これを調書に録取した場合、即ち特に被疑者に対し、あらかじめ背任の被疑事実について告知した事実がなくてもその後同被疑者が背任罪として起訴された場合において、右調書につき供述拒否権を告知しないという違法は存在しないのである。またこの場合に弁護権を不当に制限したことにはならない。本件被告人のように不拘束で取調を受け起訴された者に対し、その起訴前に被疑事実および弁護人を選任することができる旨を告げる必要はない。

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